人生100年時代。健康寿命を延ばす住まいづくり
日本人の平均寿命と健康寿命に大きな差があることをご存じですか?驚くことに、その差は男性で平均約9年、女性で平均約12年です。いつまでも自分らしく、心身ともに健康で暮らすために今からできることは何なのか。今回は、住まいと健康寿命の関係、住まいに潜む健康リスクと対策ついて詳しく解説します。
家づくりにおける「健康」は2つの視点がある
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。最期まで生き生きと暮らすためには健康寿命を延ばす必要があり、多くの時間を過ごす家は、健康寿命を語るうえで欠かせない存在と言えるでしょう。そしてポイントとなるのは、暮らす“人”の健康と“住まい”の健康という2つの視点を持つことです。
■暮らす人の健康
身体的にも精神的にも生き生きとしていること(病気にならない)
家での暮らしがストレスフリー(生活動線や住み心地などに悩みがない)
■住まいの健康
耐久性や耐震性など構造が優れていること(安心・安全)
劣化しにくいこと
人も住まいも健康であるためには、暑い・寒いといった温度差をなくしたり、適切な湿度を保ったり、風通しが良くきれいな空気環境が保てる家づくりをすることです。
家の中で起こりうる健康上のリスク
残念ながら、家にいるから安心・安全、健康を維持できるというわけではありません。家の中で起こる可能性がある代表的な健康上のリスクを紹介します。
■シックハウス症候群
建材や家具、日用品などから発生する揮発性有機化合物(VOC)やホルムアルデヒドといった化学物質、ハウスダストによって引き起こされる室内の空気汚染が原因とされています。目の痛みやかゆみ、チカチカ、充血のほか、鼻、耳、喉、肌、神経系、呼吸器系など症状は人により異なります。
■アトピー性皮膚炎
湿疹やかゆみなど皮膚の炎症を伴う病気で、子どもに多いイメージですが、大人になってから発症する人も多いとされています。寝具、ソファやカーペットなど、家のありとあらゆる場所に潜むダニが原因のひとつと言われています。
■アレルギー・ぜんそく
汚れた室内の空気環境が悪影響を及ぼし、アレルギーやぜんそくを引き起こすとされています。原因は、ハウスダスト、化学物質、結露が発生源となり発生したダニ・カビなど様々で、皮膚、気管支、目や鼻など症状が出る部位も多岐にわたります。
■ヒートショック
急激な温度変化で血圧が上下に大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす健康被害のことです。お風呂場だけでなく、暖かい室内から冷えた廊下に出た際も起こりやすいシーンで、家の中で発生する事故の代表格です。
■熱中症
室温が高い状態にいることで体温が調整できなくなったり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたりすることで起こるとされています。立ちくらみ、筋肉のこむら返り、頭痛、ほてりなどの症状が出ます。
どれも一度は聞いたことがある症状や病気ではないでしょうか。軽症の場合もありますが、重症や最悪の場合は死に至るケースも。家の中には、健康を妨げる多くの原因が存在していると言えます。
快適な住まいを維持するには
世界保健機関(WHO)は、健康の観点から冬の住宅の最低室内温度として18度以上を強く勧告しています。また、室温を2度上げると健康寿命が4歳のびる、室温を5度上げると脳神経が10歳若くなるという研究結果も発表され、室温が健康や健康寿命に関係していることが分かります。
ここからは、室内温度のコントロールをはじめ、健康寿命を延ばすために不可欠な快適な住まいづくりについて紹介します。家の中で起こりうる健康上のリスクを低減するためにも必要な取り組みです。
室内の温度差を減らす
1年を通して室内の温度を一定に保つことは、人の健康にも住まいの健康にとって非常に重要です。
■エアコンなど冷暖房器具を活用しましょう。効率的に温度を均一にするためにサーキュレーターを一緒に使うのもおすすめです。
■外気温の影響を受けやすい窓対策は必須といっても大げさではありません。遮熱や防寒機能付きのカーテンを設置したり、窓サッシに隙間テープを貼ったりするのも有効です。
■脱衣所や廊下などに冷暖房器具を置きましょう。
温度差による血圧の上下によって引き起こされるヒートショック対策として有効です。また、快適な室温を維持することは暑さによる熱中症対策、寒さによる高血圧症や動脈硬化、夜間頻尿による睡眠の質低下などへの対策としても効果的と言われています。
不便さ・不快さを解消する
年齢とともに、筋力や骨力、寒さや暑さを感じとる感覚器官など様々な身体機能は低下します。怪我や病気をする前、正常な判断ができなくなる前に、家の中にあるちょっとした不便さや不快さを解消しておくことが大切です。
■つまづきやスリップなどによる事故防止のために、手すりや段差解消スロープを設置するのも良いでしょう。
■室温と密接に関わる湿度に、不快感を覚える人も多いのではないでしょうか。こまめに換気をして、快適な湿度を保ちましょう。湿度が低すぎると肌が乾燥してかゆくなったり、喉を痛めたりする場合もあります。逆に湿度が高いと息苦しくなったり、発汗機能がうまく作用せず代謝が悪くなったり、血液循環が滞り体が冷えてしまうことも。さらには、ダニやカビの発生し、人や住まいのリスクを増大させる可能性があります。換気や掃除をしやすい家づくりをすることが有効な対策です。
築年数の古い家は注意
日本の住宅は、耐震性・耐火性などの構造や、高温多湿対策として風通しが重視されてきました。日本で、暑さや寒さを防ぐ断熱材が使用されるようになったのは1990年頃のため、それよりも前に建てられた家は寒さに弱いと言えるかもしれません。
これからの家づくりでできる健康維持の工夫
健康上のリスクを減らし、いつまでも自分らしく暮らすために、家づくりでできるヒントを紹介します。
高気密高断熱
快適な室内環境づくりには不可欠とも言えるのが、高気密高断熱です。
高気密性は、建物の外部と内部の間にある隙間を最小限に抑えることで、外部からの風や空気の侵入を制限します。高断熱性は、建物の外壁や屋根、床などに断熱材を使用して外部からの熱の侵入や逃げを防ぎ、室内の温度を外気の影響から守ってくれます。室内の温度を一定に保つことで快適性がアップするだけでなく、省エネにも効果があると言われています。また、結露の発生しにくくなるため、家の劣化を防ぐというメリットもあります。
24時間換気システム
高気密高断熱性とセットで取り入れたいのは、24時間換気システムです。その名の通り、常時、室内の空気を自動的に入れ替えてくれます。窓を開けなくても換気ができるため、花粉やPM2.5などの侵入を防止し、さらには、家の劣化の原因となる湿度も適切にコントロールしてくれる優れものです。
全館空調
住まい全体の温湿度をコントロールする全館空調もおすすめです。ヒートショックなどの事故を予防し、世界保健機構(WHO)の推奨する18度以上の室温を維持することもでき、様々な病気のリスクを下げることもできるでしょう。一般的な壁掛けエアコンとは異なり、室内外の機器が少なくなるため、部屋全体がすっきりとするのも魅力のひとつです。
自然由来の素材
シックハウス症候群の原因となる化学物質を含まない素材での家づくりは、生活に多くのメリットをもたらしてくれます。代表的な素材をピックアップしてみました。
■天然無垢材
接着剤、防カビ・防虫剤などを使っていないため、体に優しい素材と言えるでしょう。また、調湿機能があるため室内を快適に保ってくれます。無垢材は時間の経過とともに、木肌の色も変化するためインテリアとしても魅力的です。
■漆喰
化学物質に頼ることなく、素材の力のみで固まる安全な壁材として知られています。調湿性と不燃性を兼ね備えているだけでなく、経年劣化も少なくメンテナンスも簡単と言われています。
■柿渋
柿渋は、熟す前の青い柿の実から採った汁液を時間をかけて発酵・熟成して作られる天然素材です。塗料として使用することで防腐、防カビ、防水効果が期待できます。太陽光に当たったり酸素に触れたりすることで色味が変化するため、使えば使うほど味が出る皮製品のように、“育てる”という楽しみもあります。
■米のり
化学物質は建材や壁紙だけでなく、塗料や接着剤などに含まれていることがあります。自然由来の米のりは、人にも優しいだけでなく、乾燥してもはがれにくく、木工用ボンドと変わらない接着強度があると言われています。
壁や床など使用する量の多い建材だけでなく、塗料や接着剤まで配慮することで、より健康上のリスクを減らすことができるでしょう。
住まいづくりでいつまでも健康に
健康維持の三要素は食事・睡眠・運動と言われていますが、生活の基盤となる住環境も健康に大きく関わっています。心身ともに健康的な生活を送るには、室内の温度や湿度をコントロールし空気環境をきれいに保ち、不便さや不快さを解消してストレスを溜めない。そして、暮らす人にとっても、住まいにとっても健康をキープすることが重要です。
いつまでも自分らしく、生き生きと暮らす。健康寿命を延ばすためにも住まいを見直してみませんか?栃木県内で家づくりを検討している方は、ぜひ「健康太郎の家」にご相談ください。人にも家にも優しく、健康が長続きする家をご提案します。